高畠のギルマス記

ギルドハウス高畠、ギルドマスターのブログです。

新規就農と移住を考える2-2

新規就農と移住を考える2-2

昨日に引き続き新規就農と移住について考える記事を書いていきます。

バックナンバー

新規就農と移住を考える1-1

https://masterhato.hatenablog.com/entry/2019/05/14/165747

新規就農と移住を考える1-2

https://masterhato.hatenablog.com/entry/2019/05/16/145906

新規就農と移住を考える2-1

https://masterhato.hatenablog.com/entry/2019/06/19/193618

 

講義のまとめはつらつらと羅列してるだけなので、出来れば最後の方のまとめを読んで欲しいです。

 

~ここから講義のまとめ~

2-1 植物の生育環境① 山形大学農学部教諭

 今年の気候はかなり暖かく1週間米の生育が早いようだ→昨今は気候変動が大きくカレンダー農業は難しい。JAなどで毎年同じ時期に米を試験しているので参照していくとよい。

地球温暖化と言われているが、一番問題なのは最低気温が上がっている事で夜に植物の呼吸が増え消費するエネルギーが増え実の品質が下がるという部分。作物の体格が大きくなると温度に応じて加速度的に呼吸の量が増えるため作物全体のバランスが重要。また二酸化炭素濃度が上昇することにより光合成が増えると根の給水能力が重要になってくる。中々見えない所だけれど作物に問題がある時は引き抜いて根っこを見る事が大事。根の伸張が違えば栄養の吸収力や給水力が全く変わってくるのでまずはここの観察をしていく、基本的には細い根がたくさんある状態がよい。

環境保全型農業について

 化学合成肥料、農薬を減少させるために診断をして対応する。まずは農地に施している肥料を把握しなければ環境保全型農業とは言えない。N(窒素)肥料はどのくらいの分量加えたか。堆肥は豚か牛かまずは自分の畑についてデータを残していく事が必要。NPK(窒素、リン酸、カリ)の配分が重要、土壌の分析を踏まえて施肥の量をうまくコントロールする事が環境保全型農業の中心である。稲作も物語が必要でそのポイントは2つ、1つめは技術力があるという事の物語、2つめは安心安全、環境の保全に寄与しているという事がポイント。どちらも実際に体験やビジュアルで訴えかける必要がある。

光量と葉の色の関係

日照が多い→色がうすい  日照が少ない→色が濃い

集光たんぱく質には窒素をもちいており、葉の緑色を司る。日照が変化したときに色が適正に変化する事が窒素のバランスも示す。

 

2-2土壌肥料① 山形大学農学部教諭

 畑、ハウス、水田各々で肥料の消費量、拡散量、有機物の分解力が全然違う。

畑の場合好気性微生物が多く有機物分解されやすく、水田の場合は嫌気性微生物が多く有機物が分解されない。稲作の場合はいらない藁を秋から水田にすきこんでおくことで有機物の量をある程度担保することができる。

稲作の施肥として収穫後の稲ワラの分解が重要。稲わらの分解はpH6.0、気温が高く、好気性細菌と土に触れる事が必要で、秋の時点で藁を早めに土にすきこんではやめに還元してあげるのが重要。

土壌の見方

変化する性質ついて

(pH、EC、石灰、苦土(MgO)、リン酸、窒素など)肥料で管理する領域

pHとは作物の体温のようなもので作物毎に生育が上手くいくかどうかの必須要件。

雨水や肥料を加わると土壌は酸性になるので、ミネラル分を加えて調整する。作物によって必要とするミネラルが異なるが、石灰のみだと土壌のミネラルバランスが崩れるので苦土石灰を加えるやり方がポピュラー。pHは蒸留水25mlに土10gを混ぜてpHメーターを指すと簡単に図る事が出来る。

 ECとは畑の血圧のようなもので水溶性の塩基の量を表す。硝酸態窒素の量が大きく反映されるため土中の栄養分が量を見る指標となる。ハウス農家の場合特に、雨などで土中養分が流出する量が少ないので硝酸態窒素が残留し生育へ影響を与える事がある。(そのためハウス栽培では→1にEC、2にpH)またEC値を図る事で肥料の利用を適切にし、土地や地下水の汚染を防ぐことが出来る。ECが高い状態ではカルシウムを加えてもpHを変化させられないので適切にする必要がある。

またEC値が高いとイオン勾配の関係から水分の吸収力と栄養の吸収量が大きくなるので、水やりや施肥にも変化するので注意。

 

変化しない性質について

(土性、リン酸吸収係数、CEC)土壌改良剤等で管理できる領域

粘土質の土はCEC(土性、陽イオン交換容量)が高く土壌ミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウムアンモニア態窒素等)の許容量が違う。砂質の土は逆に低い。

一般的に粘土質の土は地力が高く、砂質の土は地力が低いと言われる。CECがだいたいの基準値となり必要な肥料が変わってくる。 

土中の肥料となる窒素分は大きくアンモニア態窒素(NH4+)硝酸態窒素(NO3-)の2つの形をとっている。アンモニア態窒素は土壌では窒素化して窒素ガスを出し硝酸態窒素に変化した上で吸収されるため緩効性であり、施肥タイミングが重要。しかし硝酸態窒素は水で流されやすいため水田に撒きすぎると地下水の汚染に繋がる。そのため水田ではアンモニア態窒素を、畑では硝酸態窒素を肥料として用いるのが良いとされる。

リン酸吸収係数について

1200~1500→火山灰混入  1500以上→火山灰土壌

火山灰にはアルミニウムが多く含まれる。アルミニウムは3価の陽イオンでリン酸との結合能力が高いくリン酸が欠乏し、土壌のpHが低くなり酸性土壌となる。リン酸吸収係数の高い土壌ではカルシウムを施用し、さらにリン酸を施用する事で土壌をコントロールできる。火山灰の土は黒ぼく土と呼ばれ有機物はゆっくり分解されやわらかく水分をたくさん保持できる。(平均的な土10g→水7~8g、火山灰土10g→水10~13g)

 

2-3、専攻別講義 果樹② 山形県農林大学校

苗木と接ぎ木について

接ぎ木とは植物体の一部を切って他の植物体へ癒着させる事をいい前者を接穂と後者を台木。接ぎ木の苗を用いる事で栄養生殖する事ができ、特定の木を接穂とする事で生育の良い苗を残していく事ができる。台木を用いることで病害虫への態勢が強くなったり、樹勢や木の大きさを調整したり、根の吸収力を調整し土地に合った作物をつくれたりと作物を作るうえで様々なメリットがある。ぶどうの場合、自根苗を使うとフェロキセラという虫がつきやすく寿命が短い。機械を用いた「くらつぎ」という手法でアメリカの野生種を交雑した品種を台木として用いる。最後に実演を交えて接ぎ木のやり方について教授いただいた。

摘蕾、摘果について

 植物ごとに花の作時期やつく場所は違うが、花を咲かせるのには大きなエネルギーを必要とするため、いい果樹を作るためには蕾を適切な数に管理しなくてはならない。

ぶどうの花房管理

 ブドウは花房がある場所にそのまま実があるので、あらかじめ必要エリアの花房を成形し、実が結実したタイミングで摘粒を行い最終的な個数を管理する

 

~ここまで講義のまとめ~

という事でここからは今回の講座を受けての感想です。

 

まめな人が成功するのはどんな分野でも同じかも

 大学の教授の講義という事もあり今回の講座は化学的なお話が多かったです。植物の生育にはどんなミネラルが必要か、天候に合わせて農業をやるにはどんな視点が必要か、環境保全型農業と無農薬栽培の違い等について化学式や具体的な数字を用いたお話をいただきました。有機農業という言葉が一般的になって自然由来の肥料を使って、自然由来の虫よけを使ってというのは結構一般的になってきたように思えますが、ただただ自然の物を使う事がいい作物造りにつながるわけでは無いという事がこうして考えるとわかります。環境も保全する、いい農作物をつくる、多くの人に知ってもらう、自分の利益も取る、消費者へ届ける、全部やらなきゃいけないのが農家の大変な所。

  そのためにすべきことは、日々作物を作る時に行った事を記録する事から始まります。そのデータがたまっていけば行くほど、作る作物の品質向上、経費削減、ストーリーづくり様々な方向での価値が上がっていく。僕自身としてはギルドの畑とか熱中小学校のぶどう園の土壌調査から初めて、日々の作業記録、写真のデータ添付をしていこうかなと思いました。

 

農業って何なんだろうと考える

 地域に住んでいて周りの農家さんと話していると農家さんは独特な哲学を持っている人が多いと感じる一方通行の会話になる事ばかり、30年も40年も自然と対話する事に特化したせいなのか作物を作るのは滅茶苦茶すごいけれど、コミュニュケーションは苦手のようで僕自身はあまりそういう風になりたいとは思わない。

 僕自身田舎に住んでいながら自分の食べ物を自分で作っていない、これはよく考えるととても不自然な事でとても脆いのではないかと思ってしまう。生きる上で一番大切な食というインフラを自分で作っているというのはこの上ない安心感ではないだろうか。

 僕自身が農業をやるとしたら「農業を通じて生きる事の安心や安全を提供する」というテーマでやりたい。そんな考えで地域内外のいろんな人と繋がって、里山の米、野菜、果樹、山の幸、文化等を送る代わりにお金や労働力を支援してもらうそんな形がいいなと思っている。困った時はお互い様と世の中がおかしくなった時に普段応援してくれる人へ作ったものを届けられるようなそんな形がいいなと思う。

 

いきなり「新規就農」といく前に・・・

実際僕自身は農家ではないし、実際に触っている畑の規模にしてみてほほとんどお遊び程度だ。それでも本気でこだわろうとするときりがないし、学ばなければならない事もたくさんあるなと感じる。奥が深い分そこにやりがいを見出していく事もたくさんできるのではとも思う。土地を所有して新規就農するというのは起業するのと同じだと考えた方がよい、基本的には自分で全て考えて行動しなくちゃならない。だから誰にでもできる簡単な話じゃないので、少しずつ試してみるのがいいんじゃないでしょうか。

 実際お遊び程度でお小遣い貰って農作業するのはいい気分転換だし、長期休暇に心のデトックスの為田舎にくるのもよいし、Webで完結できる仕事があるなら繁忙期に農業手伝うのだっていいと思う。またいくつかの田舎にのんびり住んで暮らしを確かめながら、いくつも自分のふるさとを作る事は心を豊かにすると思います。そんな暮らしを応援していく場を作っていきたいですね。

 

というところで今回の記事はここまで、毎回小難しい気がするけれど誰かの糧になれば幸いです。

 

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